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カシオ 旅行用置時計(目覚まし時計) TQ-146 運針しない故障の暫定修理

 2008年頃に新品購入したカシオ 旅行用置時計(目覚まし時計) TQ-146の秒針が全く運針せず故障したため、分解修理を行った覚え書き。

目次

現象

 運針しない。内部機構に破損等なく、分解してモータのロータを無負荷にしてみると駆動しているにもかかわらず、組み立てると全く運針しない。

対処

 秒針の運針にかかわる樹脂製の歯車の軸受(筐体に一体成型)に、とりあえずただのシリコーンオイル(*1)をつけて組み立てたところ、とりあえず運針するようになった。

対処の問題点

 シリコーンオイルの粘度が時計に使用するには高いのか(*2)、通電してしばらくは運針しようと針が震えたままで正常に運針できない。時計を振ったり暫く待つなどすると、正常に運針し始め、以後は運針を継続しており停止することはない。

 本来は、時計用のより低粘度のオイルを使用するべきと思われる。

 

*1 CRC シリコンスプレーをガラス瓶にいくらか出し、それを細いマイナスドライバの先端に付着させ、軸受につける

*2 ガラス瓶に出したシリコーンオイルにドライバの先端を漬けて引き上げると、ねっとりと少し糸を引く

対処へと至った理由・メカニズム

 当初、機構の破損がないことを確認した時点で単なる油切れと思われたものの、シリコーンオイルを各部(軸受、歯車の歯、歯車同士が重なり合っている部分など、抵抗になっていそうな箇所)に塗布しても運針できなかったので、何らかの問題でモータのトルクが低下して運針できなくなったのではないかと考えたが、自分は正常な時計のモータのトルク具合を知らなかったため良否判定できなかった。

 本機はメーカ定価でも2,200円、Amazonの実売はわずか500円少々と大変安価であり、時計修理の経験値獲得のためにも、運針しない原因を特定したかったことや、小型のアナログ置時計はやはり必要だったため、検証用として新たに新品を購入して分解し、正常品のモータトルク具合と比較検証した結果、故障機のモータトルクは特に弱ってはおらず、原因ではないことが判明した。

 機構に破損はなく、モータのトルクにも異常がないため、原因はやはり潤滑にあると考え、今一度秒針の運針にかかわる歯車全てを念入りに脱脂洗浄し、シリコーンオイルが抵抗になっている可能性を考慮して、今度は最低限必要と思われる歯車の軸受のみに注油を行った。

 その結果、とりあえず組み立て後も運針するようになった。通電開始初期を除けば、安定して運針し始めてからの運針の停止や時刻の遅れは、今のところ発生していない。

 なお、故障機を分解した当初、各部には潤滑油らしき液体が若干残っており、軸受や歯車の面部分にも付着していたが、故障機は毎年真夏に室温40℃以上になる場所で11年程度稼働していたことがあり、故障時で購入から14年を経過して工場出荷時の潤滑油はすでに劣化変質していると考えられたため、脱脂洗浄を行った。

 今後、時計用の潤滑油を手に入れたら、改めて整備してみたい。

 

2022年11月18日追記 再度停止

 その後、2022年夏頃に再び運針しなくなり、再度軸受にシリコーンオイルを注油するものの、ロータ単体でも全く駆動できなくなっていた。

 原因が潤滑以外にもあると考え、機構を仮組みして、従来とは違う角度から改めて観察し直したところ、筐体を完全には閉じずに隙間がある状態(つまり、ロータが軸受から多少浮いている状態)にすると正常に運針する。

 ロータを観察し直したところ、ロータ(*3)のプラスチック部品がわずかに割れて広がっており、これによりロータの直径が大きくなったことで、ロータが収まる部分と干渉したため、ロータの回転に相当な抵抗があることがわかった。先が鋭いプラスチック棒でロータの歯車を直接小突いても、明らかに擦れていることがわかるほど動きが渋くなっていた。

 2022年4月の記事執筆時点でも、ロータのプラスチック部品に1箇所割れがあることは判っていたが、ロータの回転に影響はない様子だったため、対処は行わなかった。しかし今回確認したところ、割れ箇所が増えて広がりも大きくなり、ロータが完全に回転しなくなったものと思われる。

 

*3 本機のロータは、歯車付のプラスチックの帽子のような部品が、磁石にはめ込まれてロータを構成している

 

 割れた部品の代替はなく、ロータ全体でも納豆の粒より小さい程度で修繕も困難なため、とりあえずプラスチック部品が広がって干渉している部分を、適当にサンドペーパで削り、ロータ周囲にもオイルを注油して組み立てたところ、正常に運針できるようになった。

 なお今回は潤滑に、40℃での動粘度が時計用オイルに近い ISO VG 32 の「タービンオイル2種」(エーゼット)を用いた。プラスチック部品への注油では耐油性が問題になるが、ポリアセタールやポリアミドならば鉱油への耐油性があるらしいため、実験的に用いた。ロータ以外のプラスチック歯車各部にも注油しているため、今後、タービンオイルが原因と思われる劣化が起きた場合は、また追記する。